2023.8.5に起きた遺棄について

2023/8/5 トイプードルの男の子が遺棄されていました。
ご飯やおもちゃ、この子について書かれたファイルと共に置き去りにされた命。

動物遺棄は動物愛護法違反であり、犯罪です。
しかし、問題は犯罪行為であるということだけではありません。

発見されるまで、遺棄された子には事故や熱中症をはじめ、あらゆる命の危険が伴います。
期待とは異なる人が先に発見し、虐待を目的に連れ帰られるリスクも考えられます。

また、法律上犬猫たちは所有物となってしまいます。
所有権の所在が明らかでない子は譲渡が出来ず、動物愛護法違反の通報も兼ねて警察への連絡が必要不可欠です。
今回のようなケースでは所有権の保管期間が発生し、その期間を過ぎなければ家族を探すどころか検査や予防接種すら行えません。

人より遥かに短い生涯。
本当なら思いっきり甘えられる時間、家族として暮らせる時間、そうした大切な時間が保管期間として過ぎていくのをただ待つのみになってしまいます。

山奥や誰もいない場所に置いていかれるより、保護施設の前に置いていくのは元ご家族の優しさというお考えもあると思います。

しかし、保護施設に遺棄されたからといって必ず保護できるわけではありません。
どこの保護施設にも人員、スペース、経済面、多くの角度から限界があります。

保護施設ならどんな無理をしてでも引き受けるべきというお声もあるかもしれませんが、出来る以上のことを引き受けていては最終的に多頭飼育崩壊を引き起こし、無責任な結果へと繋がります。

迎えた命には責任を持つべきであり、持てないのなら迎えてはいけません。
保護する命には責任を持つべきであり、持てないのなら引き受けてはいけません。
「誰かが助けてくれるだろう」という気持ちがある限り、悲しい思いをする命はなくなりません。

書き置きのファイルには、「大事に、大切に一緒にすごしてきました」と書かれていました。
誕生日やワクチン情報も記されていて、遺棄する瞬間までは大事にされていたのでしょう。
この子に対して心苦しさ、後ろめたさがあったのかもしれません。

しかし、本当にその子を思うのなら、安心できるよう次を託す人との対話をもって準備することがせめてもの責任ではないでしょうか。
手放す人には理由がありますが、この子たちには理由がわかりません。

海くんは、自分からお膝に乗ってくれる一面もある一方、ふいにお口が出てしまう瞬間があります。
『甘えん坊でさびしがりな子です』と書き置きにある通り、さびしがりな子だからこそ、こわくて不安を感じているような気がします。
不安そうな彼を見て、この選択がベストだったとは到底思えません。

今回の件は、警察の方で動物愛護法違反として捜査を進めていただけることになりました。
動物遺棄は1年以下の懲役、または100万円以下の罰金刑となります。

本当にその命を大切に思っていたのなら、まずは相談してください。

私たちは保健所、飼育放棄、繁殖所といった様々な背景において保護が必要な命をひとつでも多く守るため、常にお世話できるいっぱいまで保護しています。
今回は海くんを保護することができましたが、状況によっては遺棄された命は警察の方に託さざるを得ないこともあります。

飼育出来なくなったという後ろめたさから逃げず、真摯に話してもらえれば、ただただ責めるというようなことはしません。
出来ることやアドバイスにもちろん限界はありますが、きちんと相談してもらえればできることがないか一緒に考え、向き合います。
過去のご相談でも、共に暮らし続ける方法を一緒に模索した結果、無事最期までその命と過ごすことができた方もいらっしゃいます。

誰かに命を託すとき、どうか遺棄という行為だけはしないでください。

このような悲しい出来事が、もう二度と起きませんように

NPO法人ラブファイブ

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