2025/5/29
保護犬カフェ鶴橋店前に段ボールに入れられた命が置き去りにされていました。
軽く閉じられた段ボールの隙間からはチワワと思われる男の子。
遺棄は動物愛護法違反として警察への通報が必須であり、所有権の観点からも法律上、そのまま保護ということは出来ません。(警察の方々の緻密な捜査によって過去に遺棄した人たちは監視カメラなどから特定に繋がっており、本件に関しても捜査中となっています)
一時保護のために施設内に入り、警察署の方が体の大きさを図ろうとすると、それすらこわかったようで飛び上がり、爪も伸びきっている状態。
それでも、しゃがんだスタッフの膝に必死に来てくれた姿が印象的で、この子はどんなに不安で悲しくてこわかっただろう、という気持ちが拭えません。
当団体の保護犬カフェやシェルターには常にたくさんの子たちがいます。
それぞれに飼育放棄や保健所、繁殖場といった様々なところから人の事情を理由に行き場を失い、保護され、その向こう側には保護を待つ子がたくさんいることも常です。
とはいえ、限界の頭数を越えての保護は無責任になるため、守られる命には限りがあります。
そのような中で、遺棄をされると保管期間の関係で数週間から長くて数か月もの間、その子は家族を探せず、ただ待つのみの日々となり、保護を待つ別の命は辛い時間を耐え続けることになってしまいます。
遺棄はその子の命を危険にさらすと同時に、保護を待ち続けている子たちの命をも蔑ろにする行為です。
私たちは保護譲渡活動を行っているからこそ、たくさんの出会いと別れを見てきました。
特に家庭で生活していた子たちは、たとえ元々の生活がひどい環境だったとしても、施設を出ていく家族のうしろ姿を、出て行ったドアを、見つめています。
それはその子にとって世界でたったひとりの、誰よりも大好きな家族だったからです。
ちゃんとご相談されて、しっかりその子のこれまでをお伺いできる状況だったとしても、このように悲しい思いをさせてしまうことは避けられないのに、遺棄のように暗い箱に閉じ込められ、置き去りにされた心の傷はとても大きいと思います。
警察での管理期間を終え、捜査は続いていますが、彼は家族を探してもいいというお話になったため、なんとかお部屋を工面し、彼は「ふくじろう君」というお名前で当団体にて家族を探すことになりました。
不安の多い環境の変化が続いたせいか、ご飯はいろんなおいしいものを試してみても、手で口元へ寄せてみても、なかなか進まず。
思いっきり甘えて、時にはお手も披露してくれますが、気が付くと自分のしっぽを咬もうとしてしまうため、エリザベスカラーを着けて今は過ごしています。
遺棄せず、きちんと相談してくれていれば、甘え上手なこの子は今ごろ家族と心穏やかな時間を過ごせたかもしれないと思うとやりきれません。
繰り返しになりますが、遺棄という行為は動物愛護法違反という犯罪であり、命を見殺しにする行為です。託したのではありません。
この子を置き去りにしたのは、とても辛いご事情や後ろめたさがあったかもしれません。
それでも、相談して安心できる場を探す、そこに向き合う責任だけは捨てないでください。
人員や施設のスペース、経済的にも出来ることに限りある中で最大限を尽くしていても、保護を待つ命がたくさんいます。
保護譲渡活動はきれいごとではなく、現に昨今の物価高騰のあおりを受けているため、次に同じことが起きた時に保護できる保証はありません。
遺棄されてしまったという事実は変えられませんが、読んでいただいた方々と遺棄が犯罪であるという認識を広げ、世間全体での抑止力と共になっていただければ幸いです。
さいごに、今回こうして彼を「ふくじろう君」として、当団体で保護することが出来たのは、保護犬たちを家族にお迎えいただいた里親様、日ごろから応援してくださる皆様のおかげです。
いつも応援してくださり、本当にありがとうございます。
このような場で心苦しいところではありますが、活動を続けていくことが出来ますよう、今後ともご協力いただけますと幸甚に存じます。
ふくじろう君は、一度は悲しい思いをしたと思いますが、これから素敵なご家族と出会い、心穏やかに楽しい生涯を過ごせますよう、スタッフ一同尽力してまいります。
NPO法人ラブファイブ/保護犬カフェ